世界旅日記

フィリピン人と結婚した日本人妻によるハロハロ(雑記)ブログ

人の流れと経済

 先日のブログのテーマはバナナでした。多くのフィリピン産バナナが日本で消費されていますが、その背景をちらりと覗いてみました。バナナの他に有名なのは、人の流れです。

 フィリピンではOFW(Overseas Filipino Worker)、フィリピン人海外労働者が人口の11%、860万人〜1100万人は居るとされています。数字のひらきは不法滞在も含めた数です。フィリピン人の海外労働者と訳しましたが、広くはフィリピン人海外在住者※(OFとも呼ばれている)また一時的滞在者両方にこの言葉が使われるようです。世界的に見ると、送金受取額の大きい国の4位(世界銀行の調べ)に位置しています。1位はインド、2位は中国、3位はメキシコですが、インドと中国は人口比からすると納得ランクイン、メキシコは隣国のアメリカ1000万人を超える規模の移民を送り出していることから、極めて高い額を受け取っているのは納得でありますが、東南アジアに位置するフィリピンが突出して海外送金の受取額が高いことは大変特徴的であると思います。

 彼らが稼いだお金を実家に定期的に送金していることから単純労働をする出稼ぎ労働者と理解する人も多いと思いますが就労の形態は実は様々です。皆さんご存知のエンターテイナーから、エンジニア、建築家、看護師、IT技術者、船乗り、介護従事者、学者、家政婦等々・・です。日本では、1970〜80年代に流行ったフィリピンパブのイメージが大きいのではないかと思われますが、現在も日本には様々な技術を持ったフィリピン人が就労し、生活しています。※1

 実際OFWによるフィリピン国内の経済的なインパクトはかなり大きく、フィリピン中央銀行(BSP)の発表によると、2010年の総金額は187億ドルです。GDPの約1割に相当します!!フィリピンは工業基盤が脆弱なため、貿易赤字。しかしその経常移転黒字があるために、経常収支は黒字になっています。

 家族が海外送金をあてにするために、労働意欲が低下する!?、送金が個人の消費(生活費、教育費)にあてられ、投資には結びつかないこと、また長期にわたる片親(時に両親)の不在が及ぼす家族への影響、政府がOFWに依存するために国内の雇用対策をきちんと講じないことなど、プラス面ばかりではなくマイナス面も多くあります。

 つい先日、サウジアラビアでのフィリピン人家政婦のビザ発給停止が発表されました。フィリピン海外雇用局(POEA)は以前から、サウジで就労するフィリピン人家政婦の最低賃金を1カ月当たり400米ドル(約3万2,000円)と設定、雇用主を対象に住所や年収などの提示を義務化するよう求めていましたが、サウジアラビアは不服を表明しました。今年の4月にフィリピン政府は使節団を送り、交渉を試みましたが決裂、その結果今回のビザ発給停止に至ったようです。サウジアラビアでは120万人以上のフィリピン人が就労していますが、18万人は家政婦として就労しており、今回のビザ発給停止に伴う失業が懸念されています。送金に頼る経済から一歩、フィリピンの文化とスタイルにあった経済発展への施策を政府が地道に取り組んでくれることを願うばかりです。 

※1性別ごとの従事している産業データはhttp://www.poea.gov.ph/stats/Skills/Skill_Sex/Deployment%20per%20Skill%20and%20Sex%202009.pdf